HeavyBommer

米テロ事件と報復攻撃

2001/09/28 ちょっと修正/追記します。

前書き

 9/11の米国同時多発テロ事件で犠牲となられた方々に哀悼の意を表するとともに、被害者の方々、関係者の皆さまに対して心からお見舞い申し上げます。


テロの原因

 まず、テロ自体についてだが、原因として2通りの考えが出来るだろう。
一つは一般的にマスコミ等でいわれているように、ただ単にイスラム原理主義勢力が米国やイスラエルの政策に腹を立ててやったというもので、もう一つはアメリカ政府自身の自作自演であるという物だ。
まあ、あれだけの被害を出し、ペンタゴンまでダメージを受けているところからして完全な自作自演ということはまず無いであろうが、わざとテロリストを刺激して事件を起こさせたところ、想像以上の被害を受けたという可能性は否定できない物があるだろう。
 そう思う理由はこれまでの情勢にある。
まず、アメリカではクリントン氏に変わって共和党のブッシュ氏が大統領になった。
共和党は基本的に保守系勢力で裕福層や軍関係者に支持者が多く、軍事力の増強などを主張している。
また、ミサイル防衛関連でロシアとの条約を破棄する意向を示すなど実際に軍事力強化の道を歩みだしてもいる。
さらに、ITバブルの崩壊で経済事情も芳しくない。
 アメリカは大統領の人気取りのためにはスケープゴートを作って戦争やら一方的な攻撃やらを行うことは良くあることだが、スケープゴートを作るには何らかのきっかけが必要だし、そのきっかけは大きいほど効果は高い。
今回の件でも、アメリカ世論は一気に国粋的になっており、報復攻撃への賛成は実に90%にも達している。
また、戦争になれば特需景気で経済がにぎわう可能性もあるし、それが無くても国民は国内問題から関心が薄くなって、多少のことでは文句を言わなくなる。
そうなれば軍事力を増強することに反対する声は少なくなるだろうから、共和党の思うつぼだ。
 さらに、どうもアメリカは「テロの発生をある程度察知していたのではないか」という情報が至る所でいわれているし、どういった証拠があるのか解らないがウサマ・ビンラディン氏と彼を匿っているとされるアフガニスタンのタリバン政権を早々に犯人と決めつけている。
まあ、この辺は諜報活動の結果として事前にそれなりの情報を入手していたという可能性はあるが、アメリカ側がわざと刺激したと考えるとしっくりくる。
ちょうど太平洋戦争突入(真珠湾攻撃)への経緯に似ていると思うのは私だけだろうか。
 ちなみに、このところのアメリカの出方を見ると、地上部隊を含む全軍行動(=軍事力増強の布石となる)やら暗号規制の強化、盗聴システム(エシュロン/カーニボー)の強化など軍国的な方向に向かう兆候が多数見受けられる。
このまま戦争になったとしたら、勝っても負けても(負けることはないだろうが、ベトナムのように「勝てない」ということは考えられる)アメリカ国内の世論は軍拡や政府の干渉行為に賛成する可能性が高いだろう。


報復攻撃の是非

 上で書いたように、この事件がアメリカの計画による物なら報復攻撃も予定されていた物であろうからやって当然なのだろう。
ただ、表向きはそうではないし、自作自演でないと言う可能性も充分(と言うか一般的にはそちらの可能性の方が高いと思われるだろうし)にあるから、ここでは自作自演かどうかは考慮に入れず、単にテロ行為に対する報復の是非を論ずる。
 まず、報復攻撃自体についてだが、肉親や知人を失った人々にしてみれば犯人を切り裂きたい気持ちは当然あるだろう。
だが、それをそのまま実行しても良いものだろうか?
それでは仇討ちやら決闘やらが行われていた中世社会と同じであるし、第一犯人と称されている者が本当に首謀者なのかどうかも定かではない。
また、アフガニスタンを攻撃しても、結局首謀者や政権の中心人物はおいそれと捕まったり殺されたりすることはなく(フセインがそうであるように)、結局被害を受けるのはなんの罪もない一般市民やら下っ端の兵隊ということになる。
そう考えると現在のアメリカの行動は明らかに批判されるべきであろう。
各国もアメリカに協力するのは間違いだと思う。
 ではどうすれば良いかということになるわけだが、「右の頬を打たれたら左の頬を差し出せ」等という絵空事を言うつもりはない。(とは言ってもアメリカの行動は大統領就任式に聖書を持ち出すキリスト教国家とはとても思えない)
国際的な犯罪であることは間違いのないことなのだから犯人を特定し何らかの罰を与えることは再発防止の観点からも必要であろう。
ただ、それを法治的な手段で行うのが文明社会だと思う。
充分な役割を果たしているとは言えないが、国連という国際機関があるのだからそう言った場で決議を行って、国連軍として行動するべきだろう。
2001/09/27 「憎しみは憎しみしか生まない」とはよく言った物で、テロという憎しみに報復攻撃という憎しみをぶつけても、新たな憎しみを生み出すという悪循環が蔓延るだけだと思う。
もちろん、再発防止策という観点で首謀者に罰を与えるというのはある意味で必要な面はあるし、被害者感情というものもけして軽視することは出来ない。
とはいえ、まずはなぜテロが起こったのかも考える必要があるだろう。(アメリカの自作自演ではないとして)
 結局のところ、アメリカの都合に振り回されて多数の同胞を失った者達がアメリカに恨みを抱くのも当然のことで、そう言った部分は無視して敵意だけを振りまくアメリカには虫酸が走る。
 例えるなら蜂蜜を取ろうとして蜂の巣を突っついたら蜂に刺され、怒って蜂を皆殺しにするような物だろう。
 まあ、実際のところ報復攻撃を行うことはほぼ避けられないだろうし、仮に国連軍として攻撃したとしても禍根が残るのは同じだろうから、既に避けようのない泥沼に入っているのだろうが、脊髄反射のような行為は慎んでせめて法治社会としての大義名分は考えて欲しいものだ。
アメリカ人(というか欧米人全般)はもうちょっと世界の多様性を認識して、自分たちの正義が絶対であるというような考え方を改めるべきだろう。
 それから、このような大事なときにローマ法王は何をしているのだろう?
一番活躍すべき時ではないのだろうか?
ついでに言うなら日本も本来はローマ法王に似た立場にあるはずだ。
平和憲法の理念はどこに行ったのだろうか?
まあ、国連軍としての行動に参加するなら良いだろうが、アメリカの怒りにまかせた報復攻撃(となれば明らかに単なる紛争だし)に荷担するのでは第9条が泣くという物だろう。


戦闘の行方

 とはいえ、アメリカは国連などを通さずに軍事行動を起こすつもりのようであるし、大多数の国がそれを容認(もしくは積極的に協力)する構えのようでもある。
こうなっては現状のまま戦争になることは(タリバン側が折れない限り)ほぼ避けられないだろう。
では戦闘になった場合、どうなるのだろうか。
 マスコミではベトナムの再現を唱える専門家も多い。
その理由は、アフガニスタンの地形と軍事力、兵員の練度などであるようだ。
まず、アフガニスタンは国土の大半が山岳地帯で内陸部にあり、これから冬になる。
この辺を考えると大規模な地上戦力の投入には困難がつきまとうし、空中からの攻撃だけで戦力を無力化することはかなり難しいだろう。
そして、ソ連侵攻時にアメリカ自体が供給した武器がかなり残っているようだし、常に戦争を続けてきた国なので兵員は全てかなりの練度を持っている。
対する米軍は、まず空爆で主要施設等を攻撃し、次に地上戦力を投入するという方法に出るだろうが、湾岸戦争のように戦車の大部隊を送り込むというのは難しいだろうから、ベトナム同様歩兵とヘリをメインとした作戦になると思われる。
歩兵の戦闘では空中からの支援があるかどうかという程度の差があるくらいで、基本的には双方ともに装備の差はそれほど大きくないので、防衛側が有利なのは言うまでもない。
更に、米軍と似たような装備/規模を持つソ連軍が占領しきれなかったという経緯もある。
以上の理由からアメリカが言うほど簡単に攻略することが出来ないのはまず間違いないだろう。
 しかし、多くの専門家が言うようにベトナムや(ソ連の)アフガン侵攻の再現という迄にはならないと私は思う。
その要因として一番大きいのは「武器弾薬を補給してくれる国の有無」であろう。
ソ連のアフガニスタン侵攻時も武器弾薬はアメリカが供給していたし、ベトナムではソ連や中国という共産勢力が補給を続けていたが、今回は無尽蔵に武器弾薬を供給してくれる国は存在しないだろう。
あるとすればパキスタン位だろうが、表面的にはアメリカに協力すると言っているし、それほど無尽蔵の供給を出来るほど豊かな国でもない。
2001/09/27 イランの存在を忘れていた。
イランはアメリカとその同盟諸国には協力しないと明言したそうなので、武器弾薬を提供する可能性は充分にあるだろう。
また、イランならそれなりの経済力も軍事力もあるので、ソ連や中国ほどとは行かないまでもそれなりの補給は行うことが出来ると思われる。
だが、そうは言っても多少戦争を長引かせる程度の効果にしかならないだろう。
ちなみに、上手くやれば中国(直接国境は接していないもののパキスタンの山岳地帯を通過すれば行き来できないことはないので)から武器弾薬を調達することも出来そうだが、政治的な問題から中国がそう言ったことをやってもあまり国益には適いそうもないのでこの可能性は限りなく低いだろう。

また、アフガニスタンは食料も不足しているらしいので、そうなってくると長期戦には国民も持ちこたえられなくなってくるだろう。
 と言うことで、私の予想ではアメリカが3〜4ヶ月程度本格的な攻撃を行っても首謀者とされるビンラディン氏を逮捕/殺害出来ないまま地上戦力を引き上げて、あとは散発的な空爆や経済制裁等を加え続けるという展開になるだろう。
とはいえ、タリバン政権自体は崩壊するか事実上の降伏を行うだろうから、アメリカは勝利宣言を出すと言うことにはなるだろう。
2001/09/27 もし、ベトナムのようにアメリカが勝てないまま撤退するとすれば、戦争の結果イスラム勢力の反米感情が高まって国内での無差別テロが頻発するというところが一番大きいかも知れない。
どのような手を打ったところで自爆覚悟のテロを完璧に防止する手段は皆無に等しいし、爆発物以外に毒劇物を使ったテロ(地下鉄サリン事件のような物)は更に防止が困難だと思われる。
 さらに、米国は日本と違って多民族国家な為、一度潜り込んでしまったらそう簡単にテロリストを捜し出す術はないと思われる。
そう考えると、戦闘が長期化すればそう言ったテロ攻撃が頻発するようになって国内世論が意気消沈する可能性は否めないだろう。
まあ、逆に激高する可能性もあるが、(独立戦争/南北戦争以外で)本国に戦火の及んだことのないアメリカでは逆に反戦意識を盛り上げる可能性が高いだろう。
 もう一つ付け加えると、戦争が長引いて非戦闘員の被害が大きくなってくるとアメリカ以外の世界世論が反米に傾く可能性も否定できないものもあるだろう。
このように考えた場合、年内に決着を付けるか最低でも国土の大半を制圧していない限り、ベトナムの再来という可能性も充分出てくると思う。
 何れにしてもアメリカの言うように簡単に殲滅して容疑者逮捕または殺害とは行かないのはまず間違いない。


 

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