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軍事/防衛/国家の理想像

現在の状況について


 現在は名目上、国連が国際機関として世界秩序を守るという働きを担っている。
しかし、国連自体は何ら直接的な力(つまり軍事力)を持っていないため、国連の意志決定は常に大国の思惑に左右される。
また、アメリカは事実上世界最強の軍隊を保有し、世界の警察を自負しながら本来国連がやるべき国際秩序の維持という大役を担っている。
とはいえアメリカは表面上世界の警察を名乗っているにすぎず、その実はあくまで自国の国益を守るという目的のためにそう言ったお題目を唱えているだけである。
結局は、アメリカが軍事力と経済力を背景に世界を牛耳っているというのがその実状であろう。


理想像

 ここでの目的は国際紛争を無くし、真の世界平和を実現するにはどうすればいいかと言うことである。
戦争をなくすには以下の3つの方法があるだろう。

  1. 東西冷戦のような大規模対立による抑止効果
  2. 日本の平和憲法のように武力による問題解決をしないと全ての国が約束する
  3. 軍事力自体を取り上げ裁きを下す存在を作る

冷戦時に比較的地域紛争が少なかったように1はある程度の効果を生むが、もし火がついてしまった場合手が着けられなくなると言う重大な欠陥をはらんでいる。
また、2は日本政府が実践しているようにあくまで口約束のような物で、実際それを保証する効力は無いに等しい。
と言うことは、残された3を実行するしかないだろう。
我々一般的な市民が個人同士で何かしらの問題を抱え込んだとしても、武器を持って殺し合うというようなことはまずあり得ない。
それは、相手を殺せば捕まるという抑止力、暴力に変わる問題解決手段として(建前上)公平な司法機関があると言うこと、楽に相手を壊滅させるような武器が手に入らないと言うことなどの理由からであろう。
であれば、国際社会にも同様の論理を適用すればいいと言うことになる。

 理想としては、国という単位を取り払って、全ての国が一つの国家になると言うのがもっとも簡単な解決策である。
地球連邦政府のような物があり、その政府には立法機関/行政機関/司法機関の3権を担う機関が存在し、それを執行する力として軍事力/警察力を直接保有するということである。
それを実現するには山のような問題を解決して行かねばならないが、国家という単位を維持しそこに軍事力を持たせている以上絶対に国際紛争は無くならない。
以降、日本の役割を考慮しながらその実現へのステップを説明する。


まずすべきこと

 いきなり国家を無くし、国際政府を作ろうとしてもそれは不可能である。
まずは、その下地を作っていくことから始めねばならない。
そのために有効だと思われるのはNATOのような地域軍である。
現在は欧州にしか存在しないが、これをアジア、オセアニア、アフリカ、中東、南アメリカと言った地域にも作っていくのである。
いきなり当該地域で全ての国を加盟国にするというのは難しいであろうが、例えばアジアでASEANの軍事版を作ると言うくらいなら不可能ではないであろう。


近い将来

 次は各国の憲法でその国の軍隊を該当する地域軍の承諾無しには運用できない(例えば欧州ならNATOで承認されない軍事行動は起こせない)ように明言するのである。(以降、国際不可侵条項と呼ぶ)
これは一件各国に利益がないように見えるが、自分が侵略戦争をしない変わりに周辺国から侵略されることもないというギブアンドテイクの理論を提供する。
つまり、侵略戦争をするつもりがないのならば、国際不可侵条項に対して何ら問題はないはずであるから、逆に国際不可侵条項に反対する国は侵略の意志有りと見なされてもおかしくないと言うことになり、それに従わざるを得ない空気を作り出すことが出来る。
もちろん、そのためには地域軍内部での意志決定がクリアで全ての参加国に公平でなければならないのは言うまでもないし、問題を解決するための法廷のような存在や規定を定めていくための議会も必要であろう。

 さて、そうは言ってもいきなり全ての国&地域が国際不可侵条項に賛同するとは思えない。
ここで日本の出番であるが、日本はその憲法上の制約や周辺諸国との確執により、例え防衛のためであっても海外派兵やそのための装備を持つことを大分制限されている。
しかし、資源は全て海外に頼り邦人も多数海外で働いているのであるから、シーレーンや海外邦人/企業を守るために軍隊を派遣できないと言うのは大変なマイナスである。
また、攻撃は最大の防御であるにもかかわらず、周辺諸国と同等の攻撃兵器(爆撃機/長距離対地ミサイルなどの長距離対地攻撃兵器の類)は事実上保有できない。

 そこで、国際組織の決定無しに軍事行動を起こさないという確証があれば、そうした問題を払拭できるの可能性が多分にあり、国際不可侵条約を日本が率先して提唱していくことは日本にとっても大きな利益となるであろう。
しかしそうは言っても日本は憲法をどんどんゆがめてきた実績も周辺諸国を侵略した実績もあるため、憲法で規定するだけでは無理があるだろうから、自衛隊の指揮権を総理大臣から地域軍に委譲してしまうと言うのが良いと思う。
それによって、日本人が運営はしていても最終決定権が日本にないことになるから、憲法の理念とも矛盾しなくなるし周辺諸国にも文句を言わせずに済むであろう。
その上で、日本はそこまでしたんだから他の加盟国もせめて憲法へ国際不可侵条項を規定しようと提唱するのである。
もちろん、そう簡単に行かないことは解っているが、日本が上手くリーダーシップを発揮し、国際世論を味方に付ければ不可能ではないと思う。


将来

 各地域軍が結成され、その加盟国が憲法で国際不可侵条項を規定したら、次は加盟国同士で兵員の交流を進めていく。
自国兵士の2割程度を加盟各国に派遣し、その空いた部分に他国からの派遣兵士を入れていくのである。
そうすることにより、単に憲法で規定されているだけの国際不可侵条項にある程度保険を賭けることが出来る。(侵略等の兆候が外部に漏れる可能性が高まり更に侵略攻撃は自国を含んだ複数の国の人間を殺すことになる)

 それが進んだら次はいよいよ地域軍同士を結ぶ組織を作るという作業に入る。(以降、連邦軍と呼ぶ)
現状の国連を改良してその役目を果たさせるという手もあるだろうが、常任理事国の拒否権をなくすことなどはかなり難しいとも言えるので、私としては新しく組織を作ってそのうち国連に取って代わるというのが良いのではないかと思う。

 連邦軍が完成し、軌道に乗ったら今度は国際不可侵条項を拡張して、その対象を地域軍から連邦軍にする。
当然兵士の交流も地域軍ベースから連邦軍ベースとなり、派遣する兵員の割合も増やして行く。
その割合が5割を越えたら、指揮権自体を完全に連邦軍へ委譲するというのもそれほど抵抗無く出きると思われる。

 ここまで行けば、国際紛争はまず起こらなくなるだろう。
武力以外でも公平に問題解決を行う手段が提供されるし、武力に訴えたくても自国の軍隊は思い通りには動かないのであるから当然だろう。
非加盟国との衝突においては、当事国の背景に連邦軍という大きな力が出来ることになり、例え弱小国であってもアメリカなどの大国と(アメリカ/中国/ロシアはこの時点でも連邦軍に加入していないと予想)互角に渡り合える。


遠い(?)将来

 その後は加盟国内で軍事以外の部分でも協調体制を深めていく。(この時点で軍という呼称はふさわしくなくなるので以降は単に連邦と呼ぶ)
まずは、関税の撤廃(その前に経済格差の是正が必要だが)などであろう。
いわばEUのような物である。
それと平行して、未加盟国を引き込む努力を継続する。
おそらく、その時点で未加盟である国でも他の大部分の国が密接に繋がりだしたら対抗できないことを悟ってくるはずである。
ここで一番問題になりうるのは、未加盟国同士がそれを脅威と受け取って別の連合を作ってしまうことである。
中国/ロシア/アメリカがそう言った同盟を作って連邦に対抗するという図式になってしまうと、東西冷戦時代と変わらなくなってしまう。
何とかしてそれだけは避けるべきだろう。


連邦軍の運用

 一応想定している連邦軍の運用形態を記述しておく。
なお、大多数の国が加盟し指揮権を委譲している前提である。

 まず、意志決定機構であるが最下位から説明する。
各国にはその国の防衛を担当する駐留部隊がいる。
この部隊は、様々な出身国の兵士から構成されている。
駐留部隊の指揮官も同様である。
その部隊を国単位で統括するのが駐留軍指令官で、現場の最高責任者となる。
彼は連邦軍としての作戦や駐留国政府からの要請を元にした作戦を立て、その承認を評議会に求める。
評議会はいくつかの国の代表(メンバーの構成国は定期的にランダム選出し、総会での了承を得る)からなり、駐留軍司令官からの報告や作戦/行動要求を許可する/しないの判定だけ行う。
判定に際しては、その作戦/行動の当事国委員を除いたメンバー全員の多数決をとる。
評議会の上位には最上位である連邦総会が存在する。
これは各国の代表が公平な発言権/議決権をもつ議会であり、国で言うところの国会に当たる。
当然、上位の機関は下位の機関の決定を覆すこともできるし、トップダウンで行動を指示することもできる。
また、これも当然だが攻撃を受けた場合の反撃や防衛/災害救助などは、現場のみの判断で可能である。

 この方法で、各国政府によるクーデター(加盟国が連邦の決定に反して軍事行動を起こせばクーデターである)を防止しつつ、緊急対処も世界規模の作戦も遂行できる意志決定機関を作り上げることが出来るだろう。


連邦軍の軍備調達

 連邦自体の予算は加盟各国が経済状況に合わせて出資する連邦税によってまかなわれる。
もちろん、各国は警察力や単純な防空設備(レーダー類/SAM/スクランブル要撃機程度)以上の軍備を直接保有することは禁止する。
武器の調達自体は、連邦軍の主催による一般競争入札を採用するが、可能な物は極力現地調達するようにする。
これにより経済格差の平均化にも一役買うことが出来るだろう。

 次に人員であるが、基本的には全て志願者を募る。
各国で直接連邦軍が募集を行い、ある程度の試験を行った上で採用する。
その後採用された兵士は基本的な教育&訓練を受けて、どこかの国に派遣される。
もちろん、本人が自国にとどまりたいと希望すればその意思は尊重するが、各国に駐留する部隊のうち半数以上は他国出身の兵士で構成されるようにする。


 

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